「やる気が出ない」のは、怠けではないかもしれません

院長コラム
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「怠けているだけ」と自分を責めていませんか

朝、起きても体が重く、なかなか布団から出られない。以前は楽しめていた趣味にも手が伸びない。やらなければいけないことは分かっているのに、どうしても取りかかれない。そんな自分に対して「怠けているだけだ」「気持ちの問題だ」と、厳しい言葉をかけてしまう方は少なくありません。

診察室でよく耳にするのが、「このくらいで受診してよいのか分からなかった」という言葉です。熱や痛みのように分かりやすい症状ではないため、つらさを我慢したまま時間が過ぎてしまうことがあります。今回は、「やる気が出ない」という状態の背景にあるものと、受診を考える目安についてお話しします。

やる気は「気合い」だけで決まるものではない

やる気、つまり意欲は、心の持ち方だけで決まるものではありません。睡眠や食事、体の疲れ、ストレスの積み重なりなど、さまざまな要素に支えられています。睡眠不足が続いたり、疲れがたまったりすれば、誰でも意欲は落ちます。これは怠けではなく、心と体が「少し休んでほしい」と知らせているサインと考えることができます。

一方で、休んでも戻らない意欲の低下もあります。厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、うつ病について、楽しみや喜びを感じられない、何か良いことが起きても気分が晴れないといった状態が2週間以上続き、それまでの社会生活が難しくなる状態と説明しています。

「ただの疲れ」と「休んでも戻らない不調」の違い

目安として、次のような点を振り返ってみてください。

  • 週末や休日にしっかり休んでも、気力が戻ってこない
  • 以前は楽しめていたことが、楽しいと感じられない
  • 寝つけない、夜中や明け方に目が覚める、あるいは寝ても寝ても眠い
  • 食欲が落ちた、または食べ過ぎてしまう
  • 集中できず、簡単な判断にも時間がかかる
  • 「自分はだめだ」と自分を責める考えが繰り返し浮かぶ

こうした状態がいくつか重なり、2週間以上続いている、仕事や家事に支障が出ている、という場合には、一度専門の医療機関に相談することをおすすめします。うつ病では、頭痛や肩こり、胃の不快感、だるさといった体の症状が目立つこともあります。気分の落ち込みをあまり自覚していなくても、意欲の低下や体の不調として現れる場合がある、ということを知っておいていただければと思います。

睡眠と生活リズムとの深い関係

意欲の低下と睡眠は、互いに影響し合っています。眠りが浅い日が続くと日中の気力が落ち、気力が落ちると日中の活動が減って、夜の眠りがさらに浅くなる。こうした悪循環に入っていることがよくあります。

また、休日に昼近くまで寝る、夜遅くまでスマートフォンを見る、といった生活のずれが、体内時計を乱し、朝のだるさや意欲の低下につながっていることもあります。第3号「眠れない夜を、薬だけに頼らず整える」でもお伝えしたように、起きる時刻をそろえ、朝の光を浴びることは、心の調子を整えるうえでも大切な土台です。

体の病気が隠れていないかも確かめる

意欲の低下やだるさの背景に、体の病気が関わっていることもあります。たとえば甲状腺の働きの低下、貧血、睡眠時無呼吸などはその一例です。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」でも、体の病気や内科で使う薬が原因となってうつ状態が生じることがあるとされています。

むくみや寒がり、体重の変化、大きないびきや日中の強い眠気などがある場合には、内科での検査をおすすめすることがあります。服用中のお薬がある方は、受診の際にお薬手帳をお持ちください。

当院の考え方――薬だけに頼らず、土台から整える

意欲の低下に対して、すぐに薬で何とかしようとするのではなく、まずは睡眠と生活リズムという土台を一緒に見直すことを大切にしています。

  1. 眠りの状態を知る ―― いつ寝て、いつ起きているか、夜中に目が覚めていないかを簡単に記録します。当院では、脳波で眠りの状態を測る「インソムノグラフ」も取り扱っています。
  2. 起きる時刻をそろえる ―― 寝る時刻よりも、まず起きる時刻を一定にすることから始めます。
  3. 小さな行動から始める ―― 「やる気が出たら動く」のではなく、「少し動くと気持ちがついてくる」ことがあります。散歩などの軽い運動は、うつの症状を和らげることが知られています。5分の散歩、窓を開けて外の空気を吸う、といった小さなことで構いません。
  4. 負担の「元」を振り返る ―― 仕事量や人間関係など、気力をすり減らしているものがないかを一緒に整理します。

お薬が必要な場合もありますが、その際も可能な限り最小限の処方を基本にしています。

こんなときは、一度ご相談ください

  • 休んでも気力が戻らない状態が2週間以上続いている
  • 以前は楽しめていたことが、楽しめなくなった
  • 眠りの乱れや食欲の変化が続いている
  • 仕事や家事、身の回りのことに支障が出てきている
  • 周りの人から「元気がない」「様子が違う」と言われる

「このくらいで受診してもよいのだろうか」とためらう段階こそ、相談していただきたい時期です。早めに生活を整え始めることで、回復への道のりが短くなることも少なくありません。

なお、「消えてしまいたい」「生きているのがつらい」と感じることがあるときは、一人で抱えずに、すぐに身近な人や医療機関、次のような相談窓口に連絡してください。

  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(おかけになった地域の公的な相談窓口につながります。受付時間は地域によって異なります)
  • 静岡市こころの健康センター 電話相談「てるてる・ハート」:054-262-3033(平日13時〜16時)
  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間)

おわりに

やる気が出ないとき、多くの方は「もっと頑張らなければ」と自分を追い込みます。けれども、意欲の低下は、これまで頑張ってきた心と体からのサインであることも少なくありません。

自分を責める前に、まずは眠りと生活のリズムを見直してみること。それでも戻らないときは、どうぞ気軽にご相談ください。一緒に、土台から整えていきましょう。

当院は初診・再診とも完全予約制です。ご予約はお電話(054-200-2227、受付 9:00〜17:00)にて承っています。

※本コラムは一般的な情報提供を目的としています。症状については自己判断せず、医療機関にご相談ください。

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