「最近、同じことを何度も聞くようになった」
「前より怒りっぽくなった」
「もの忘れだけでなく、様子そのものが少し変わってきた気がする」
このような変化があると、ご本人だけでなく、ご家族もとても心配になると思います。
認知症とは、記憶力や判断力、理解力などが低下し、日常生活に支障が出ている状態のことです。
年齢とともにもの忘れが増えることはありますが、認知症は単なる加齢による変化だけでは説明できないことがあります。
たとえば、
- 同じ話を何度も繰り返す
- 約束そのものを忘れてしまう
- 服薬やお金の管理が難しくなる
- 慣れた場所で道に迷う
- 性格が変わったように見える
- 怒りっぽさ、不安、幻覚、妄想が出てくる
といった変化が目立つ場合には、早めに相談することが大切です。
認知症と、年齢によるもの忘れはどう違うのですか?
年齢を重ねると、誰でも多少のもの忘れは出てきます。
たとえば、「昨日の夕食のおかずがすぐに思い出せない」ということは、年齢相応でもみられます。
一方で認知症では、
食べたこと自体を忘れてしまう、
生活の中で困ることが増えてくる、
という違いがあります。
また、認知症とまでは言えないけれど、年齢相応より少し認知機能が低下している状態を、MCI(軽度認知障害)といいます。
MCIは、認知症と健常の中間のような状態です。日常生活はある程度保たれていても、「以前より明らかに忘れっぽい」「段取りが悪くなった」と感じることがあります。
そのため、もの忘れの診療では、
年齢相応なのか
MCIなのか
認知症なのか
を丁寧に見分けることがとても大切です。
当院の認知症診療の特徴
1.長年にわたり、もの忘れ診療に携わってきました
院長は、20数年前に静岡県立こころの医療センターでもの忘れ外来を担当するようになって以来、現在まで認知症診療に携わってきました。
長いあいだ、もの忘れそのものだけでなく、
- 不安が強くなる
- 怒りっぽくなる
- 幻視が出る
- 落ち着きがなくなる
- ご家族が対応に困る
といった症状も含めて、多くの方を診てきました。
そうした経験が、現在の診療の土台になっています。
2.コウノメソッドで得た知識を、今も診療のベースにしています
当院では以前、名古屋フォレストクリニックの河野和彦医師が提唱されているコウノメソッドを採用し、コウノメソッド実践医として診療していました。
現在は、グルタチオン点滴治療に対応していないため、実践医の登録はしておりません。
しかし、認知症治療に関する考え方や、薬の選び方、副作用への注意などについては、コウノメソッドで得た知識が今も大きな土台になっています。
3.長谷川式認知症スケールを、院長が直接行います
認知症の診療では、長谷川式認知症スケールなどの検査がよく使われます。
多くの医療機関では、看護師などのスタッフが検査を行うこともあります。
しかし当院では、院長自身が検査を行います。
それによって、単に点数だけを見るのではなく、
- どの質問で困りやすいのか
- 注意がそれやすいのか
- 記憶の弱さが目立つのか
- 言葉の理解に特徴があるのか
- 取り繕いがあるのか
といった、ご本人の認知機能の特徴を直接把握することができます。
このことは、診断や治療方針を考えるうえで、とても大切だと考えています。
4.精神科として、BPSDにも丁寧に対応します
認知症では、もの忘れだけでなく、
- 不安
- 抑うつ
- 幻視
- 妄想
- 夜眠れない
- 怒りっぽい
- 興奮しやすい
- 暴言や拒否がみられる
といった症状が出ることがあります。
こうした症状は、BPSD(認知症に伴う行動・心理症状)と呼ばれます。
ご家族が「もの忘れより、むしろ性格の変化や対応の難しさで困っている」と感じることも少なくありません。
精神科である当院では、こうしたBPSDに対して、ご本人のつらさと、ご家族のご負担の両方を意識しながら診療することができます。
5.いきなり強い薬で眠らせるような治療は行いません
認知症のBPSDに対して、医療機関によっては鎮静を目的に強い抗精神病薬が使われることがあります。
もちろん必要な場合はありますが、当院では、いきなり強い薬で抑えることを第一には考えません。
まず、
- 何がきっかけで症状が出ているのか
- 体調不良や便秘、痛み、睡眠不足はないか
- 環境の変化が負担になっていないか
- 薬の副作用ではないか
を丁寧に確認します。
そのうえで、本当に必要な場合に限って、慎重に薬を選びます。
当院の基本方針と同じように、認知症診療でも薬に頼りすぎないことを大切にしています。
6.認知症でもMCIでもない場合には、サプリメントをご提案することもあります
もの忘れが気になって受診されても、診察の結果、
認知症にも当てはまらない
MCIとも言えない
という方もいらっしゃいます。
そのような場合、当院では抗認知症薬を急いで始めるのではなく、生活面を整えながら、必要に応じてフェルガードなどのサプリメントをご提案することがあります。
7.必要に応じて、他の医療機関とも連携します
認知症の診断では、血液検査や画像検査が必要になることもあります。
当院で対応できることには限りもありますので、必要に応じて、適切な医療機関へご紹介します。
具体的なケース
以下は、実際の診療でみられる経過をもとに、個人が特定されないよう調整した事例です。
ケース1:70代前半で受診し、長く安定している方
70代前半でもの忘れを心配されて受診された方です。
診察や認知機能の評価をふまえて治療を開始し、ガランタミンを使用しました。
その後、定期的に状態を確認しながら経過をみていったところ、10年以上たっても大きな進行がみられず、安定して経過しているケースです。
認知症の経過には個人差がありますが、早い段階から丁寧に状態を見極め、その方に合った治療を続けることの大切さがわかる一例です。
ケース2:年齢相応のもの忘れだが、幻視があった方
80代の女性です。
もの忘れを心配して受診されましたが、認知機能の低下は年齢相応と考えられ、認知症やMCIとは診断しませんでした。
ただし、幻視の訴えがあり、ご本人もご家族も不安を感じておられました。
そこで症状を丁寧にみたうえで、抑肝散加陳皮半夏を使用したところ、幻視が改善しました。現在も経過観察を継続しています。
このように、認知症ではない場合でも、困っている症状に対して丁寧に対応することは大切だと考えています。
ケース3:薬の見直しで落ち着いた方
80代の男性です。
他院でドネペジルによる治療を5年以上受けていましたが、ある時期から突然、攻撃性が目立つようになり、当院を受診されました。
診察では、認知症の進行だけでなく、薬の影響も含めて見直しました。
その結果、ドネペジルの長期服用による副作用の可能性も考えられたため中止し、ガランタミンへ変更したところ、状態は安定しました。
認知症の治療では、「同じ薬をずっと続ければよい」とは限りません。
症状の変化があったときには、薬そのものを見直すことも大切です。
ご家族がこのように感じたら、ご相談ください
- 最近、同じことを何度も聞くようになった
- 性格が変わったように感じる
- 怒りっぽくなった、疑い深くなった
- 夜になると落ち着かない
- 幻視や妄想のような訴えがある
- 服薬管理や金銭管理が難しくなってきた
- 一人での生活が少し心配になってきた
- 「年齢のせい」と思ってよいのか迷っている
ご家族は、はっきり「認知症かもしれない」と思う前から、
「なんとなく前と違う」
「対応の仕方がわからない」
と感じておられることが多いものです。
その段階でも、相談していただいて大丈夫です。
早めに状態を把握することで、ご本人にもご家族にも負担の少ない対応につなげやすくなります。
受診にあたって
認知症の診断は、検査の点数だけで決まるものではありません。
これまでの経過、ご家族からみた変化、生活への影響、精神症状の有無などを総合して判断します。
当院では、院長が直接検査を行い、ご本人の状態を丁寧に把握したうえで、治療方針をご提案します。
必要に応じて、画像検査や身体的な評価ができる医療機関とも連携します。
緊急性が高い場合について
急に様子がおかしくなった、
1日の中で症状が大きく変わる、
発熱や脱水、転倒、強い興奮がある、
といった場合には、認知症だけでなく、せん妄や身体疾患が関係していることもあります。
また、当院では夜間・休日の緊急対応が難しい場合があります。
そのようなときは、安全のため、救急対応が可能な医療機関への相談をご検討ください。
まとめ
認知症の診療で大切なのは、
「ただもの忘れを見る」のではなく、今どんな変化が起きているのかを丁寧に把握することです。
当院では、
- 長年のもの忘れ外来の経験
- 院長が直接行う長谷川式認知症スケール
- 精神科としてのBPSDへの丁寧な対応
- 薬に頼りすぎない慎重な治療
を大切にしています。
「これが年齢のせいなのか、受診したほうがよいのか迷う」
そのような段階でもかまいません。
ご本人だけでなく、ご家族の不安についても、どうぞご相談ください。